双極子によるポテンシャル
Potential generated by dipole

名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆

名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。

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第2部 構造のシミュレーション
Simulation of Structure

第6章 クーロン力
Coulomb force

6−2 双極子によるポテンシャル
Potential generated by dipole

双極子 dipole は,「絶対値が等しく異符号の電荷が近くにあるもの」を意味します。 ただし異符号の電荷の間の距離は無限に小さいとします。 双極子は3次元のベクトル p = (px, py, pz) として表されます。 負電荷 q から正電荷 +q を結ぶベクトルが R と表されるとします。 電荷の間の距離が有限であれば,これは純粋な意味での双極子と少し違うものになりますが,電荷の間の距離に比べて充分に離れた場所から見ると,この電荷がつくる電場は p = q R の双極子が作る電場で近似できます。

原点に双極子 p を置いたとき,位置 r で単位電荷が受けるポテンシャルは,

Vp(r) =
lim [V+p/R(rR)
R→0
+ Vp/R(r)]
(6.2.1)

と表すことができます。この式を解けば,

Vp(r) =
p
4 π ε0
lim
R→0
1
R
( 1
| rR |
1 )
r
= p
4 π ε0 r2
lim
R→0
1
R
[
r
− ( r2 − 2 r · R + R2 )1/2
]
= p
4 π ε0 r
lim
R→0
1
R
[ 1
( 1 − r · R ) ]
r2
= p
4 π ε0 r3
lim
R→0
r · R
R
= p · r
4 π ε0 r3
(6.2.2)

となります。双極子から電荷が受けるポテンシャルは,距離の −2 乗に比例することに注意してください。

双極子がつくる電場は

E = − ∇ Vp( r )
(6.2.3)

と表されます。 したがって,電場の x, y, z 成分は

Ex = − (4 π ε0)−1 r−3 [px − 3 (p · r) x / r]
(6.2.4)
Ey = − (4 π ε0)−1 r−3 [py − 3 (p · r) y / r]
(6.2.5)
Ez = − (4 π ε0)−1 r−3 [pz − 3 (p · r) z / r]
(6.2.6)

と書く事ができて,まとめれば,

E = − (4 π ε0)−1 r−3 [p − 3 (p · r) r / r]
(6.2.7)

となります。双極子がつくる電場は,距離の −3 乗に比例します。


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2013年5月17日更新