レナード・ジョーンズ・ポテンシャル
Lennard-Jones potential

名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆

名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。

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第2部 構造のシミュレーション
Simulation of Structure

第5章 原子の間にはたらく力
Interatomic force

5−3 レナード・ジョーンズ・ポテンシャル
Lennard-Jones potential

原子の間には引力と反発力(斥力)がはたらくので,隣り合う原子はこれらがちょうど釣り合う位置をとろうとして,原子の種類によって大体決まった間隔をとります。引力の原因には,共有結合,金属結合,イオン結合(静電クーロン力,電荷が異符号の場合),ファンデルワールス結合があります。

反発力(斥力)の原因には,静電クーロン力(電荷が同符号の場合),交換斥力(別のものが同時に同じ場所にいられないこと=パウリの排他律による)があります。

原子の間にはたらく引力の強さ f と原子間ポテンシャルφ(r) の間には,

f = dφ(r)
dr
(5.3.1)

の関係があります。

レナード−ジョーンズ Lennard-Jones ポテンシャルは主にファンデルワールス力と交換斥力(反発力)とをモデル化するもので,以下の式で表現されます。

φij(r) = 4 εij [ ( σij ) 12 ( σij ) 6 ]
r r
(5.3.2)

ここで ij は原子の種類を意味します。 原子の組 (ij) が決まれば,式が含む二つのパラメータ σijεij とが決まります。

σij は平均原子間距離(2つの原子の半径の和)に対応し,εij は力の強さ(ポテンシャルの大きさ)に対応するパラメータです。また 12 乗の項が反発力, 6 乗の項が引力項を表しています。イオン性結晶の場合にはクーロン・ポテンシャルを組みこんだ以下の式が用いられます。

φij(r) = qi qj + 4 εij [ ( σij ) 12 ( σij ) 6 ]
4 π ε0 r r r
(5.3.3)

ここで,二つのイオンの電荷を qiqj としています。ε0 は真空の誘電率です。

同種原子の間のポテンシャルを決めるパラメータがわかっているとき,以下の式で異種原子の間のパラメータを決めることができるとされています。

σij = σii + σjj
2
(5.3.4)
εij = εii εjj
(5.3.5)

この関係をローレンツ・ベルテロ Lorentz-Berthelot の組み合わせ則と呼びます。平均原子間距離には算術平均 arithmetic average,ポテンシャルの大きさには幾何平均 geometric average が用いられます。


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2007年7月19日作成
2013年5月7日更新