ペア・ポテンシャル
Pair potential

名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆

名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。

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第2部 構造のシミュレーション
Simulation of Structure

第5章 原子の間にはたらく力
Interatomic force

5−2 ペア・ポテンシャル
Pair potential

物質は原子の間にはたらく結合エネルギーにより安定化して特定の構造をとります。 物質全体の結合エネルギーの総和は個々の原子の間の結合エネルギーの和として表されます。

ペア・ポテンシャルは,二つの原子の間にはたらく力が,原子(あるいはイオン)の種類と二つの原子の間の距離だけで決まるとする単純化されたモデルです。 i 番目の原子と j 番目の原子の間の距離を rij としたときに二つの原子の間の結合エネルギーが φij(rij) と表されます。

ペア・ポテンシャルを使う事を前提とすると,N 個の原子からなる系の全体のポテンシャル Φ

Φ = N − 1 N φij( rij )
i=1 j=i+1
(5.2.1)

あるいは

Φ = N i−1 φij( rij )
i=2 j=1
(5.2.2)

と表されます。 これらの表現では,同じ原子ペアが重複しないように和の添字の範囲を調整していることに注意してください。

ペア・ポテンシャル・モデルは,アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,酸化物などのイオン結合を持つ無機化合物の原子間相互作用を良く再現できます。 逆に純金属や合金,共有結合性結晶などペア・ポテンシャルで構造の推定をするのが難しい場合もあります。

分子性結晶では,分子の形を決める分子内相互作用はペア・ポテンシャルで単純には表されない事が多いのですが,分子の形状を固定して分子の間にはたらく力をペア・ポテンシャルの和として計算する方法は有効です。

以下,代表的なペア・ポテンシャルであるレナード・ジョーンズ Lennard-Jones (LJ) ポテンシャルとボルン・マイヤ・ハギンス Born-Mayer-Huggins (BMH) とを紹介します。


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2007年7月19日作成
2013年5月7日更新