力とポテンシャル
Force and potential

名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆

名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。

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第2部 構造のシミュレーション
Simulation of Structure

第5章 原子の間にはたらく力
Interatomic force

5−1 力とポテンシャル
Force and potential

原子が受ける力 f は,原子位置 r のポテンシャル φ(r) と以下の式で関係付けられます。

f
= − φ(r)
(5.1.1)

ポテンシャル φ(r) は一つの実数で特徴づけられるスカラー量であるのに対して,位置 r と力 f は三つの実数で特徴づけられる三次元のベクトルであることに注意してください。位置 r

r = ( x, y, z )
(5.1.2)

のように x, y, z 座標で表され,力 f も 具体的には以下のように x, y, z 成分で表されることになります。

f = ( fx, fy, fz )
(5.1.3)

nablaナブラ と呼ばれる微分演算子記号です。以下の式で表される意味を持つとされます。

= ( ∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z )
(5.1.4)

スカラー・ポテンシャルに を作用させると,結果が三次元のベクトルになります。勾配 gradientグラディエント とも呼ばれ, の代わりに “grad” と表記される場合もあります。


補足 他の微分演算子

以下の式で表されるラプラス演算子 Δ , Laplacianラプラシアン は, の内積として, Δ = · と表現することもできます。

Δ = 2 + 2 + 2
x 2 y 2 z 2
(5.1.5)

演算子 とベクトル場の内積は発散 divergenceダイバージェンス,外積は回転 rotationローテーション と呼ばれます。

この演算子を使えば電磁気学の基礎方程式である Maxwellマックスウェル 方程式は以下のように表現できます。

1.磁束保存の式

磁束密度 B の発散がゼロであることを意味します。

· B = 0
(5.1.6)
2.ファラデー・マックスウェル(電磁誘導)の式

電場 E の回転が,磁束密度 B の時間微分に比例することを意味します。

× E = − B
t
(5.1.7)
3.ガウス・マックスウェルの式

電束密度 D の発散は電荷密度 ρ と等しいことを意味します

· D = ρ
(5.1.8)
4.アンペール・マックスウェルの式

磁場 H の回転が,電束密度 D の時間微分と電流密度 j との和に等しいことを意味します。

× H = j + D
t
(5.1.9)

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2005年10月26日公開
2013年5月5日更新