名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆
名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。
二つの入力 A, B が食い違っているときにだけ 1 を出力する演算
を「排他的論理和」 exclusive OR あるいは XOR, EOR と呼び,意外に良く使われます。 そのうちの一例は第3章で扱う「算術演算」です。
MOS-FET を使う場合,図 1.16 のような回路で排他的論理和が実現されます。
図 1.16
MOS-FET による XOR 回路
XOR ゲートの MIL 記号を図 1.17 に示します。
図 1.17
XOR ゲートの MIL 記号
図 1.18 には,3組の CMOS を水色,黄色,ピンクに色分けして示します。
図 1.18 中,水色の CMOS は NOT 回路(1−3−1節)であり,入力 A がこの NOT 回路の入力として接続されていることを確認してください。この回路の出力は A と表されます。
残りの2組の CMOS の出力が並列に接続されたものが XOR 回路全体の出力となっていますが,さらに PMOS(上段)と NMOS(下段)とに分けて一つ一つの MOS-FET の動作を確かめます。
図 1.18
XOR 回路のしくみを説明する図。水色,黄色,ピンクの3組の CMOS で構成されている。
図 1.18 中,黄色の PMOS (上) と NMOS (下) のゲートはいずれも入力 B に接続されていますが,PMOS のソースは A に,NMOS のソースは A に接続されています。 PMOS はゲート電圧 (B) がソース電圧 (A) より低い場合 (B < A) だけソース (A) とドレイン (D1) の間が導通状態になるので,“A = 1, B = 0” の時にはドレイン電圧が D1 = A = 1 と確定します。それ以外の場合にはソースとドレインの間は絶縁状態になるので,ドレイン電圧 D1 は確定しません。表 1.4 の D1 の値を確認してください。 一方,NMOS はゲート電圧 (B) がソース電圧 (A) より高い場合 (A < B) だけソース (A) とドレイン (D2) の間が導通状態になるので,“A = 1, B = 1” の時にドレイン電圧が D2 = A = 0 と確定し,それ以外の場合 D2 は不定です。表 1.4 の D2 の値を確認してください。
図 1.18 中,ピンクの PMOS (上) のゲートは A に,NMOS (下) のゲートは A に接続され,ソースはいずれも入力 B に接続されています。 PMOS はゲート電圧 (A) がソース電圧 (B) より低い場合 (A < B) だけソース (B) とドレイン (D3) の間が導通状態になるので,“A = 0, B = 1” の時にはドレイン電圧が D3 = A = 0 と確定し,それ以外の場合には D3 は不定です。表 1.4 の D3 の値を確認してください。 最後に,ピンクの NMOS はゲート電圧 (A) がソース電圧 (B) より高い場合 (B < A) だけソース (B) とドレイン (D4) の間が導通状態になるので,“A = 0, B = 0” の時にドレイン電圧が D4 = B = 0 と確定し,それ以外の場合 D4 は不定です。表 1.4 の D4 の値を確認してください。
XOR 回路の全体の出力 Y には4つのMOS-FET のドレイン端子 D1, D2, D3, D4 が並列に接続されていますが,常にそのうちの一つしか導通状態に無いので,出力が一通りに決まります。
A | B | A | D1 | D2 | D3 | D4 | Y |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 0 | 1 | 不定 | 不定 | 不定 | 0 | 0 |
0 | 1 | 1 | 不定 | 不定 | 1 | 不定 | 1 |
1 | 0 | 0 | 1 | 不定 | 不定 | 不定 | 1 |
1 | 1 | 0 | 不定 | 0 | 不定 | 不定 | 0 |
2011年4月17日公開
2013年4月9日更新