名古屋工業大学
先進セラミックス研究センター
井田 隆
名古屋工業大学 環境材料工学科 3 年次授業「マテリアルデザイン」の講義ノートです。
法則というほどおおげさなことではないと思いますが,
という二つの関係のことをド・モルガンの法則と言います。「論理積の否定は否定の論理和と等しく,論理和の否定は否定の論理積に等しい」という関係です。
前節の「論理演算の規則」 から簡単に導くことができますが,実際に論理演算の中で良く出てくるのでド・モルガンの法則と呼んで使うことにします。
ド・モルガンの法則から,以下の関係も導かれます。
A ∧ B = | A ∨B |
A ∨ B = | A ∧B |
規則から
0 | = 0 |
1 | = 1 |
だから,一般的に
X | = X |
と書けることを確認しておいてください。
この法則に何か意味を持たせたければ,たとえば次のような記述を想像してみたら良いでしょう。「Q 君がタワケでもないしアホでもないということはない」この記述は,「Q 君はタワケであるかアホであるかのどちらかである」と同じことを言おうとしています。 「A ならば B」という命題(論理包含)が否定と論理和の組み合わせ「(A でない) または B」と等価だということも理解しにくいことですが,上の記述が「Q 君はタワケでなければアホである」と言い換えられることに対応します。
さて,どうして当たり前のことにわざわざ「ド・モルガンの法則」と名前を付けて呼ぶことが多いのでしょうか?
これはコンピュータや周辺回路をデザインしたり作る人にとって,(あたりまえなことだとしても)この言葉の示す内容が非常に便利で役に立ち,頻繁に用いられるからです。現実の論理演算は電子回路を使って実現されています。ド・モルガンの法則の意味する内容を利用すれば,必要な機能を実現するための素子の種類や数,配線の本数を減らすことができて,回路の動作を速くしたり,製造コストを下げたり,信頼性を向上させたり,資源やエネルギーの消費を抑えられるからなのです。
2011年4月17日公開
2013年4月5日更新