名古屋工業大学 セラミックス基盤工学研究センター
2006年度版年報 編集おぼえがき
数式の調整

名工大セラ研年報

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「数式エディタ」の問題

セラ研年報の記事のうちで,オリジナルの論文には数式が多く含まれるものがあります。 一般的な図表中の文字は本文との間で多少字形などに不一致があっても気にならないのですが, 数式のイメージは本文中に埋め込まれ,記号の説明も本文中に書かれるので,少しの字形の違いも気になります。 本文に合わせて数式中の文字を調整するためには意外に手間がかかりました。

筆者は原稿中に数式を入力するために MS-Word の「数式エディタ」あるいは Apple Works の「数式挿入...」の機能を使います。 これらはいずれも Design Science 社 MathType の機能限定版(以下数式エディタと呼ぶ)がワープロソフトに付属しているものです。 特に MS-Word の「数式エディタ」を使用する著者は多いと思われます。

後述するように,「数式エディタ」には固有の問題があるようです。 正規版の MathType を使えば解決するのかもしれませんが, すべての著者に正規版の MathType の購入を要求するのは現実的ではなく, 原稿中の数式には「数式エディタ」が使用される場合が多いことを前提として, 版組の際の処理の方法について記述します。


数式を含む MS-Word ファイルの流し込み

MS-Word で作成した文章はそのまま InDegn のファイルに「流し込む」ことができるのですが, 数式エディタで作成した数式のイメージは正しく読み込まれませんでした。

以下の例は,InDesign で作成したフレームグリッドの中に, [ファイル]→[配置...]から MS-Word のファイルを流し込んだものです。

Word ファイルの編集画面word file
InDesign ファイルに流し込んだ結果InDesign file

数式エディタで斜体に設定していたギリシャ小文字が立体になったり, 「マイナスプラス」の記号が正しく表示されなかったり, その他にも予期できない字形の変化があります。 本文(地の文)の文字の体裁は InDesign で修正することができるのであまり苦にならないのですが, 「数式」の部分は基本的にベクトル画像データとして読み込まれるので InDesign で修正することができません。


Illustrator による処理

この問題は,数式エディタから一度 Illustrator にコピーペーストでデータを移し, 必要な修正を施した後に, Illustrator から InDesign にコピーペーストでデータを移し直すという2段階の操作を施すことによって解決しました。

ただ,Illustrator で「選択ツール」を選択した状態で, 数式エディタで作成した数式イメージをコピーペーストすると, なぜか左下(クリッピングマスクの範囲外)にユーロ記号(?)を含むパスができてしまいました。 この不要なパスは「ダイレクト選択ツール」で左下の不要なパスだけを選択してから, [編集]→[消去]などの操作で消去することができます。

「選択ツール」を選択した状態でペーストされた数式。 なぜかユーロ記号が? (Illustrator 画面) illustrator with direct selection
「ダイレクト選択ツール」で不要なパスを選択する場合 (Illustrator 画面) InDesign file

Symbol フォントの変形

筆者の環境では Symbol フォントは立体のみで,斜体がインストールされていませんが, Illustrator 上で Symbol フォントに10°のシアー変形を施すことにより, Times italic とバランスのとれた「斜体の Symbol」 字形を得ることができました。 シアー変形を施すには,Illustrator から, [ウィンドウ]→[変形]を選択して「変形ウィンドウ」を表示しておきます。 「ダイレクト選択ツール」を選択して文字をクリックし, 「変形ウィンドウ」の「シアー」ポップアップメニューから「10°」を選択します。

Illustrator で文字ごとにシアー変形をほどこす
shear deformation with illustrator

Illustrator によるその他の修正

「数式エディタ」からコピーペーストされた数式イメージは, 文字の一部がクリッピングマスクの範囲外にはみだしてしまい, 印刷するときに欠けてしまうこともあるようです。 Illustrator では「選択ツール」で数式全体を選択し, [オブジェクト]→[クリッピングマスク]→[解除]とすれば クリッピングマスクを解除できます。

その他,数式中の文字の配置の細かい調整なども「ダイレクト選択ツール」を使って行うことができます。


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2006年度責任編集者:井田 隆
2007年04月04日