キャピラリ透過モードによる多連装測定

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データの保存と複製の作成

キャピラリ透過モードによる多連装測定を行う前に,今までのデータをファイルに保存,さらに他のパソコンにファイルを転送して, 複数の記録媒体にデータの複製を作成すること, その後に新しい Igor エクスペリメントファイルを作成しなおすことを推奨します。 このためには以下の操作を行います。

(1) Igor の [File] メニュー ▶ [Save Experiment] を選択して,現在のエクスペリメントファイルをそのまま保存します。
この操作は [Ctrl]+[S] のキー操作でも代用できます。 [Save Experiment] が選択できない状態になっている場合には,既に現状のデータが保存済みであることを意味します。

(2) Windows の「スタート」→「マイネットワーク」から解析用パソコンの共有フォルダを開くか,解析用パソコンから計測制御用のパソコンのフォルダを開いて Drag & Drop などの操作でデータを複製します。

(3) HP-Compaq dx7500 PC で起動している Igor の [File] メニュー ▶ [Save Experiment As...] を選択して, 新しいファイル名でエクスペリメントファイルの複製を保存します。

(4) [MDS] メニュー ▶ [Delete All Scan Data...] を選択して,すべてのスキャンデータを消去します。 この操作の前に過去のデータが保存されていることを確認してください。

(5) [File] メニュー ▶ [Save Experiment] を選択して,現在のエクスペリメントファイルを保存し直します。
この操作を実行する前なら,エクスペリメントファイルを読み込み直せば元の状態に戻ることができます。


試料の準備,設置,芯出し

(1) キャピラリ試料の準備については,「キャピラリ試料の準備」の項目を参照してください。

(2) キャピラリ試料をキャピラリ回転試料台に設置します。「キャピラリ試料の設置」の項目を参照してください。

(3) 試料を取り付けたキャピラリ回転試料台をの芯出し調整を行います。 「キャピラリ試料の芯出し調整」の項目を参照してください。

(4) 芯出し調整が完了したらキャピラリ回転試料台をゴニオメータのΘ軸に取り付けます。 「キャピラリ回転試料台の設置」の項目を参照してください。 透過率測定を行う場合にはビームストッパをはずしておきます。


透過光強度プロファイル測定

キャピラリ試料の吸収補正が不要の場合もありますが,一般的にはキャピラリ試料については透過光強度プロファイルの測定を実施することが推奨されます。 「透過光強度プロファイル測定」の項目を参照してください。


予備測定

キャピラリ試料台のビームストッパはゴニオメータの Θ 軸に取り付けられます。 Θ 軸の回転によりビームを遮る範囲を調整することができるのですが,一方で操作を誤ると「減衰されていないダイレクトビーム」が検出器に導入される危険もあります。 また,キャピラリ透過モードが常用される有機物結晶は格子定数が大きく,比較的低角にピークが現れる傾向があります。 そこで,本測定を実施する前に,予備測定によりビームが遮られる範囲を確認することが一般的には推奨されます。

(1) 目的に応じた幅制限スリット(2.5 mm, 5 mm, 10 mm のいずれか)を設置します。高さ制限スリットはキャピラリの太さより少し広めにして,完浴となるようにします。 ビームストッパを取り付け,アッテネータ(減衰板)を取り外します。
現状では,キャピラリ回転試料台の回転軸が,ゴニオメータの軸から垂直方向には 0.03 mm 程度ずれています。また,水平方向には 0.1 mm 程度ずれていると思われます。

(2) No. 6 検出器とアナライザが退避位置にある場合には,所定の位置に戻します。

(3) アナライザのエッジ幅を設定します。 キャピラリ試料からの回折ビームの太さは,どの回折角でもキャピラリ試料の太さ wCS と同じ太さになるので,アナライザ部のエッジ幅 wAE は原理的には wAEwCS / 2 cos ΘA ∼ wCS / 2 まで狭くすることができます(ΘA はアナライザのブラッグ角)。ただしエッジ幅駆動機構の精度は高くないので,1 mm 程度の余裕を見た方が安全でしょう。設定すべきアナライザ部エッジ幅としては「(キャピラリ太さの半分)+(1 mm)+α」がおよその目安になります。

(4) はじめの予備測定では,通常 Θ 軸は 0° に設定します。

(5) 0°から 5°の範囲の2Θスキャン測定をします。

(6) 2Θスキャン測定の結果から,ビームストッパでビームが遮られている範囲を判断します。 必要であれば Θ 軸の角度を変化させることによりビームストッパ位置を変更し, 必要な範囲の回折データが得られる条件を探索します。


測定条件指定バッチデータの作成と確認

(1) [MDS] メニュー ▶ [Control Panels] ▶[Comment Editor control panel] を選択して「Comment Editor」コントロールパネルを表示します。 「Target for Edition」に,未使用のスキャン番号のうち最も若い番号を入力します。 使用するスリットなど必要な情報を入力したら [Save Comment] ボタンをクリックします。

(2) [MDS] メニュー ▶ [Control Panels] ▶[Scan control panel] を選択して「Scan Control」パネルを表示します。

(3) オールアーム測定の指定

「Scan Control」パネルの “All-Arm (combined)” チェックボックスをチェックします。 既にチェックされている場合,一度チェックを外し,チェックし直す操作をします。 以下の項目について確認してください。

  1. “Scan Axis” として [Two-theta] が選択されていること。
  2. “Two Theta Correction” として [No. 1] 検出器が選択されていること。
  3. “Data Save & Plot” セクションで, 保存データ (Save) として c1〜c5, cm, c6 (dif.), en がすべてチェックされていること。 (通常,c6 (int.), xx, tm を含めたすべての項目がチェックされます)。
  4. 左軸プロットデータ (Plot Left) として c1〜c5, c6 (dif.) がチェックされていること。
  5. 右軸プロットデータ (Plot Right) として cm をチェックされていること。

(4) 操作範囲とステップ,計数時間の指定
使用できるビームタイムと予想される回折パターンに合わせて,最適な条件を指定します。 以下のことを参考にしてください。

  1. 測定の繰り返し回数 (Repeat) は 1 回とします。 (繰り返し測定ではデータ通信の回数が増えて余分な時間がかかるため)
  2. 単位計数時間 (UnitFT) は 0.5 s の倍数にします。 (キャピラリ回転試料台の回転速度は通常1秒間2回転に設定されているので)
  3. 波長 1.2 Å 設定の場合,比較的結晶性の良い物質では測定ステップ 0.004° または 0.005°,中程度の結晶性の物質では 0.005° または 0.01° とするのが普通です。 リートベルト解析が目的の場合,最小回折線幅の 1/8 から 1/15 程度にすると良いと言われています。
  4. 0.005° ステップの場合,計数時間以外に 2Θ 軸の移動,データ通信などで 1.0 s 程度の余分な時間(空走時間)がかかります。

本測定

(1) モニタカウンタのカウント率が 40,000 cps 程度以下になるように, モニタカウンタの受光部上部にアパーチャ(開口)制限板を挿入します。

(2) 測定を開始します。 「Scan Control」パネルから “Target for Edition” として該当するバッチ番号を選択し, [Batch Scan...] ボタンをクリックして開始/終了バッチ番号に該当するバッチ番号を指定し,[Continue] ボタンをクリックします。
[Batch Scan...] ボタンにより起動するバッチ測定を中断する必要があれば, 「Igor」ウィンドウの左下隅に現れる [Abort] ボタンをクリックします。

(3) 測定が完了したら, Igor の [File] メニューから [Save Experiment] を選択して, 測定データを含むエクスペリメント (.pxp) ファイルをそのまま保存し, 別のパソコンに転送してください。

(4) 別のパソコンで校正データを含んだ Igor エクスペリメント (.pxp) ファイルを開き, [MDS] メニューから [Save Data All-Arm Scan...] を選択して, 保存するデータと保存場所を指定すれば,多連装測定結果のデータファイルが作成されます。


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2008年1月7日