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PF ユーザーグループ「粉末回折」


1. はじめに

ユーザーグループ「粉末回折」(以下、UG粉末回折)は、フォトンファクトリーの粉末回折実験ステーションBL-4B2を本拠にしたユーザーグループです。

UG 粉末回折の設立は、現在ステーションに設置されている多連装計数装置を備えた高分解能粉末回折計の建設が開始された1994年のことです。このユーザーグループは、PFにおいて最初に設立された数件のUGの中の一つで、一番古い歴史を持っています。設立当時、粉末回折専用ステーション建設に向けて、設計・製作のために会合を開催したり、ビームラインデザインレポートの作成、装置の完成・試運転開始に伴なう講習会の実施などを行ってきた経緯があります。

BL-4B2 に設置された検出器多連装型粉末回折計 (Multiple-Detector System; MDS) については, 別のページにも解説を掲載しています。

非公式の BL-4B2 ユーザサポートページを別のサイトに設置しています。


2. 粉末回折実験ステーションの概要

 これから粉末回折実験を始めたいという方に、実験ステーションの概要を述べます。ビームラインは偏向磁石光源、二結晶 Si(111) モノクロメータ、半円筒形ミラー、二軸粉末回折計から構成されています。単色光使用を前提としており、波長範囲は0.65〜2.2Å半円筒形ミラーによってビームは常時水平面内で集光されており、垂直方向にもある程度集光できます。試料位置でのビームサイズは最大で水平方向13mm、垂直方向 2mm 程度で、試料は平板あるいはキャピラリーの粉末試料、および薄膜試料の測定が可能です。粉末回折計は6本の検出器アームを放射状に並べた多連装計数装置を備えており、単アーム測定に比較して測定時間を1/5程度に短縮できます。もちろん、単アームによる測定も可能です。各アームは開口角2°のソーラースリット、Ge(111) あるいはSi(111) の平板結晶アナライザー、およびシンティレーション計数管を備えています。角度分解能は、装置の設定条件に依存しますが、試料による回折線の広がりがほとんど起こらないとした場合、ピークの半値幅で0.013°(2θ)から0.024°の範囲です。それゆえ、実験室系に比較して角度分解能を5倍から1ケタ向上できます。


3.現在の活動状況と今後の計画

UG粉末回折は、ステーション立上げの時に最もポテンシァルが高く、現在は定常状態にあります。これは、ユーザーが熟練者になったためであると考えています。ユーザーズミーティングの開催の頻度は高くありませんが、研究会の方は熱を入れています。3年に一度開催しているPF研究会「粉末回折法シンポジウム」は最大のもので、前回のシンポジウムでは120名の参加者を得ました。しかし、これは中性子粉末回折グループや、その他大勢の方々の協力のもとに行なわれている事を記しておきます。  従来、各UGのホームページ (HP) はPFのHP、PF懇談会の下に開かれていましたが、方針が変更され、現在では各UGの世話人が責任をもって自分のところに開設し、PFとリンクすることになっています。現在でも建設中の部分がありますが、粉末回折計の操作マニュアル、解析用プログラム、別刷りなどをダウンロードできます。今後は、このHPを充実させ、実験技術に関する情報などの掲載に務めたいと考えています。


4.新しいUG会員のために

BL-4B2における放射光粉末回折実験をお考えの方々に、入門について簡単に状況を説明します。実験を行なうためにはもちろん課題申請とそれが認めらることが前提です。我々のグループは、BL-4B2において初めて実験を行なう人々/グループには、なるべく我々の実験の後に続けて実験して頂けるように日程を組んでいます。そして我々の実験期間中に、特に装置の立ち上げのときに参加し、一通り操作手順を覚えて頂きます。通常、我々の実験は朝の9:00に終了し、引き続き次のグループが実験を続けますが、その場合、装置の立上げの時にはそばについて操作の手助けをする事ができます。おそらく、最初の立ち上げを経験すれば、マニュアルが完備していますので、次回からはユーザー自身で操作できるはずです。少なくともそのような自立心は必要です。もう一つの方法は、可能であるならば、このステーションの熟練者達と共同研究を組むことだと思います。実験をするのが目的でなく、ただ粉末回折に関する情報を得たいと希望される方々でもご遠慮なくUG粉末回折にお入りください。


5. おわりに

データを接続するプログラムの開発など、まだまだ改良を重ねなければならない問題が沢山残っています。ご協力頂ける方々を募ります。又、以上の事柄に関しましてご質問等をお持ちの方は、ご遠慮なくご相談下さい。


2008年2月28日
名古屋工業大学
セラミックス基盤工学研究センター
解析システム研究グループ
井田 隆
ida.takashi@nitech.ac.jp