名古屋工業大学 / セラミックス基盤工学研究センター / 機能創製研究部門 /
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生体を含め自然界には、神業とも言える優れた機能を有する物が数多く存在します。 例えば、樹木は超微細構造を有する多孔体ですが、同様な構造のセラミックスを作製することは現代の技術では不可能です。 しかし、自然界には樹木の構造はそのままで、構成成分だけ有機物から無機物 (SiO2) に変換された木の化石、 珪化木という物が存在します。 本研究グループでは、この珪化木を模倣して、新規な多孔体セラミックスの創製を試みています。 図 1 は、杉材を TiO2 化した多孔体セラミックスの電子顕微鏡写真を示します。 他に、鍾乳石の生成を模倣した CaCO3 の結晶成長、多孔体を利用した新しい電波吸収材 廃棄物の自然界への還元等に関する調査・研究を行っています。
図 1 TiO2 化した杉材
或る温度で電気抵抗が急激に増大する特性を示す BaTiO3 セラミック PTC サーミスターや、或る電圧で電気抵抗が急激に低下する ZnO セラミックバリスターは、 温度や電圧などの外部環境の変化に対し、自ら電気抵抗を変化させて電流を制御することから、インテリジェントなセラミックスと考えられています。 本研究グループでは、このような特性を複合化により発現させることを研究しています。 例えば、ポリマーにバリスターを複合化することにより PTC 発現温度が印可電圧によって可変できる チューナブル PTC サーミスターの創製等を試みています。
図 2 BaTiO3 (ポリマー+バリスター)コンポジット
磁気を目に見えるようにする、そのようなことが磁気と光の両方の性質を利用するとできるようになります。 「ろうそくの科学」の作者ファラデーが発見したファラデー効果は、磁気が光に影響を示す効果で、この性質を 利用して、磁界を可視化するMOインディケーターと呼ばれるイメージング素子の開発を行っています。図3は 高温超電導体で有名なYBCOを極低温にひやしてた状態で磁界をかけ、超電導状態が壊れていく過程を侵入磁束 のイメージング化で観察した例です。デンドライト状に磁束が侵入する様子、先に明るくなる箇所が酸素欠陥が多い ことが推察されます。これらの原理を利用して、高周波の磁界も可視化しようとするセンサー開発を行っています。
図 3 YBCO薄膜の侵入磁束観察例
血管の中を動き回るロボット、そのような世界をマイクロマシン(MEMS)が目指す目標の一つ、その動力源として、 日常使われている磁石モーターを小型化して用いる、それが本研究の最終目的です。普通の磁石を単純に小型に加工しても 磁石の優れた特性は得られません。ミクロの単位で用いるには、結晶方位を制御した薄膜が必要になります。 我々は、独自の製法により、強力薄膜磁石の合成に成功し、これを実際のマイクロマシンに実用化することを目指して います。図4は、膜の高磁気特性を示す磁気ヒシテリシス曲線、柱状結晶成長を示す断面観察図です。
図 4 熱処理結晶化NdFeB系薄膜の磁化曲線と断面TEM像