解析システム研究グループ
2011 年度のトピックス

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2011 年度の論文

“ Evaluation of crystallite size distribution by a capillary spinner-scan method in synchrotron powder diffractometry ” (invited paper)

T. Ida, T. Goto & H. Hibino

IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng., 18, 022002 (6 pages) (May, 2011).

[doi:10.1088/1757-899X/18/2/022002]

キャピラリに充填された粉末試料について透過モードで測定されたX線回折測定における粒子統計の効果を評価する方法を開発した。 スピナースキャン法により得られた回折強度データの統計的な分布を解析することにより、数 μm の平均的な結晶子径だけでなく、結晶子サイズ分布の広がりに関する情報も得られることが明らかになった。 この方法は、結晶性粉末だけでなく、多結晶体試料、さらに多相混合物にも適用できるものである。


“ Structural phase transitions in KNbO3 and Na0.5K0.5NbO3

T. Sakakura, J. Wang, N. Ishizawa, Y. Inagaki & K. Kakimoto

IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng., 18, 022006 (4 pages) (May, 2011).

[doi:10.1088/1757-899X/18/2/022006]

ニオブ酸カリウム(KNbO3) およびニオブ酸カリウムナトリウム(Na0.5K0.5NbO3) の単結晶の構造相転移 を単結晶X線回折法によって調べた。KNbO3 の立方晶においては構成原子の非調和熱振動パラメータを六次の項まで精密化し、これから原子の確率密度分布と有効一粒子ポテンシャルを求めた。 その結果、相転移近傍では Nb - O - Nb - O 鎖に沿って酸素が協同的な揺らぎ現象をしている可能性が高いことを明らかにした。 Na0.5K0.5NbO3 においては斜方晶および正方晶の強誘電分域を擬メロヘドラル双晶と仮定して回折データの精密化が可能であることを示した。


“ Structural evolution of FeCO3 through decarbonation at elevated temperatures ”

J. Wang, T. Sakakura, N. Ishizawa & H. Eba

IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng., 18, 022011 (4 pages) (May, 2011).

[doi:10.1088/1757-899X/18/2/022011]

高温における炭酸鉄の脱炭酸現象を単結晶X線回折法によって調べた。 炭酸鉄微小結晶は約 255℃ 近傍から脱炭酸が始まり、結晶が次第に黒化する。 二次元検出器を用いた回折データを再構成して得られる逆格子断面の強度分布から、マグネタイト (Fe3O4) の生成が確認された。 さらに加熱すると 411℃ 付近からはヘマタイト (Fe2O3) の生成が認められた。 脱炭酸は約 474℃ で終了し、結晶は最初に生成したマグネタイトと、より高温側で生成したヘマタイトの二相のみになった。 顕微鏡観察の結果から、結晶粒子は表面がマグネタイト、内部がヘマタイトからなるいわゆる「コアシェル」構造をとっていると推定された。 これらの鉄酸化物はいずれも母構造の炭酸鉄の格子と一定の方位関係をもっていることを明らかにした。


“ Particle statistics in synchrotron powder diffractometry ”

T. Ida, T. Goto & H. Hibino

Z. Kristallogr. Proc. 1, 69-74 (September, 2011).

[doi:10.1524/zkpr.2011.0010]

[ abstract ] [ pdf (283 kB) ] [ pdf with links (284 kB) ]

キャピラリに充填された粉末試料について透過モードで測定されたX線回折測定によって得られた回折強度データの統計的な性質について調べた。 キャピラリ回転試料台をステップ回転させることにより、数千点の統計学的に独立な強度データを収集しうることが実験的に明らかになった。 粒子統計の効果を定量的に評価しうるかを確認するために、平均的な結晶子径が等しく結晶子サイズ分布のみが異なる 3 種の石英粉末試料を調製し、観測された回折強度データの比較を行った。 回折強度分布の分散から平均的な結晶子径、強度分布の歪度から結晶子サイズ分布の分散に関するパラメータを評価しうることが明らかになった。


“ Particle statistics of capillary specimen in synchrotron powder diffractometry ”

T. Ida

J. Appl. Cryst., 44(5) 911-920 (October, 2011).

[doi:10.1107/S002188981102824X]

キャピラリ透過モードの軌道放射光粉末回折測定における粒子統計の効果を理論的・実験的に調べた。 スピナースキャン法により観測される強度の統計的な解析に関して,一般的化された数学的な形式を導いた。 キャピラリ試料にスピナースキャン法を適用して得られる観測回折強度分布の歪度から結晶粒のサイズ分布の広がりを特徴づけるパラメータを評価できる事を示した。


“ Application of a theory for particle statistics to structure refinement from powder diffraction data ”

T. Ida & F. Izumi

J. Appl. Cryst., 44(5) 911-920 (October, 2011).

[doi:10.1107/S002188981102824X]

粉末回折データを用いた構造精密化のための新しい方法論を提案する。 この方法によれば,粒子統計あるいは他の統計誤差を形式的に最適化できる。 この方法は最尤推定法をそのまま誤差推定に用いるものである。 フッ素アパタイト Ca(PO4)3F とアングルサイト PbSO4,バライト BaSO4 について,この方法により精密化された構造パラメータは,伝統的なリートベルト法の結果と比較して,顕著に単結晶構造解析の結果に近づいた。


2011 年度の学会発表と講演

「回折プロファイルの読み方」

井田 隆

日本結晶学会講習会「粉末X線解析の実際」,2011年7月,東京


「粉末X線回折の使い方」

井田 隆

シンクロトロン光利用者研究会,2011年8月,名古屋


“ Crystal structures and humidity-dependent phase transitions of Gly-L-Tyr hydrates ”

T. Kiyotani, T. Ida, S. Yamamura, Y. Sugawara

IUCr 2011 XXII International Congress, August, 2011, Madrid, Spain


“ Particle statistics in φ- and ω-scan powder diffraction intensity measurements ”

T. Ida, T. Goto, H. Hibino

IUCr 2011 XXII International Congress, August, 2011, Madrid, Spain


“ Indialite and cordierite in glass ceramics for millimeterwave dielectrics ”

H. Ohsato, T. Ida, J.-S. Kim, C.-I. Cheon

IUCr 2011 XXII International Congress, August, 2011, Madrid, Spain


「粉末構造解析における粒子統計理論の適用」

井田 隆・後藤大士・日比野寿・泉富士夫

日本セラミックス協会秋季シンポジウム,2011年9月,札幌


2011 年度の研究室旅行

福井県立恐竜博物館,東尋坊,永平寺を見学しました。
[→写真


2011年09月27日更新