解析システム研究グループ
2008 年度のトピックス

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研究室旅行アルバム

2008年9月29日-30日の研究室旅行のスナップ写真をまとめました。
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大矢哲久君「第36回 東海若手セラミスト懇話会 優秀発表賞」受賞

解析システム研究グループの大矢哲久君(修士課程2年)が平成20年7月10-11日に岐阜県岐阜市のパークホテルで開催された日本セラミックス協会東海支部東海若手セラミスト懇話会夏期セミナーにおいて,優秀発表賞を受賞しました。発表題目は「粉末X線回折ピーク形状による微小歪みの評価」です。

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2008年度の論文

検出システムの数え落しの影響を受けた観測強度データの統計的な性質

井田隆・大矢哲久・日比野寿

セラミックス基盤工学研究センター年報 2007, 7, 1-5 (March, 2008)

繰り返しチップマン箔挿入法により,実験室型粉末X線回折計と高分解能型軌道放射光粉末回折計について検出システムの数え落しの影響を受けた観測強度の統計的な分散を実験的に評価した。 数え落としの影響は中間拡張死時間モデルによりモデル化した。 実験的に評価した分散は一回のチップマン挿入法測定を最小二乗解析して見積もられたパラメータを用いて概ね再現された。 このことは迅速な校正測定によって観測強度データがともなう統計誤差の適切な値を予測できることを意味する。
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Phase Transition of Gd3RuO7 From a Structural Point of View

H. Nakano, K. Tateishi, and N. Ishizawa

セラミックス基盤工学研究センター年報 2007, 7, 6-15 (March, 2008)

酸素欠損が規則配列したホタル石型構造の一つであるGd3RuO7の構造相転移を高温単結晶X線回折法によって調べた。相転移は 382K 近傍でおき,低温相の空間群は P21nb,高温相の空間群は Cmcm である。相転移はほぼ可逆的で,低温側では頂点を共有した RuO6 八面体鎖が一つおきに微小回転する。このとき,Gd 原子の配位数も 8 から 7 へと減少する。高温相では 3 種類の結晶学的に独立な Gd 原子位置があり,このうち,RuO6 八面体鎖を b 軸方向に繋いでいる Gd1 の位置はスプリットアトムモデルを適用して精密化された。この Gd 原子はスプリットした二つの位置を時間の関数として動的に揺らいでいるものと推定された。電子顕微鏡観察では相転移近傍にスプリットした衛星反射が観測された。
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太陽電池用高純度シリコンの新しい製造法(IV)

島宗孝之,石澤伸夫・日比野寿・荒木規

セラミックス基盤工学研究センター年報 2007, 7, 17−21(March, 2008)

四塩化ケイ素の亜鉛還元による高純度シリコン製造プロセスに関する2007 年度の研究成果を報告した。まず,四塩化ケイ素を液状のまま反応に供することを試みた。次に,シリコン結晶の系内における成長条件の検討を行った。液状四塩化ケイ素の直接投入は反応を安定させることを見出した。本実験で行った濃厚雰囲気下におけるシリコンの生産量は,直径わずか30mm の反応管であるにもかかわらず,連続運転を仮定すると年2 トンに相当する。反応管内の温度制御を工夫することにより,シリコンの粒成長を制御できる可能性を見いだした。
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New measures of sharpness for symmetric powder diffraction peak profiles

Takashi Ida

J. Appl. Cryst., 41(2), 393-401 (April 2008)

左右対称な粉末回折ピーク形状の尖り具合を特徴づける新しいパラメータを提案した。 この尖り度パラメータはピーク形状関数のフーリエ変換のν次のモーメントを用いて定義される。ガウス型関数やロジスティック分布関数,双曲正割関数,ローレンツ型関数,フォークト関数,ピアソン・セブン関数,擬フォークト関数などの経験的なモデル関数と,統計的なサイズ分布を伴うサイズ広がりに関する理論的なピーク形状関数について解析的な形式を示した。複雑な形式の理論回折ピーク形状を経験的なモデル関数で近似する場合に,尖り度パラメータの等しい形式として一義的に関係づけられることを示した。
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Statistical properties of measured X-ray intensities affected by counting loss

Takashi Ida

J. Appl. Cryst., 41(6), 1019-1023 (December 2008)

計数システムを用いて測定されたX線強度の統計的な性質を実験的に調査した。 中間拡張死時間モデルについて統計分散の形式を提案し,実験室型粉末回折計および軌道放射光粉末回折計のX線検出システムについて,チップマンの箔挿入法に基づいた繰り返し測定から実験的に得られた分散の値と比較した。 数え落としに関する伝統的な理論モデルによって示唆された通り,観測強度の分散はカウント数の平均よりも小さいことがわかった。 死時間τと拡張度ρを固定パラメータとして含む中間拡張死時間モデルを適用することによって,統計的な誤差が予測できることを示した。
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Diffusion of Li atoms in LiMn2O4 ‐ a structural point of view ‐

Nobuo Ishizawa, & Kenji Tateishi

J. Ceram. Soc. Jpn., 117[1] 6-14 (January 2009)

スピネル系結晶中の Li の拡散は、Li の本来の位置である 8a 席と、6個の酸素に八面体的にとりかこまれた空の 16c 席を利用した単純なホッピング機構であろうと思われてきた。しかし実際はもっと複雑で、Li の拡散路には 8a および 16c 近傍に多くの安定な位置があり、従来考えられてきた対称性の高い 8a や 16c 席にはあまり滞留しない。Li の拡散には Li をとり囲む酸素四面体の変形が必要である。X線をつかって観測された酸素原子の空間的分布は、時間の重みをつけて平均化されたこの変形の痕跡である。MD の立場から見ると、酸素原子の位置の乱れは、まず Mn3+ とMn4+ の分布状態によってその初期状態が与えられ、時間の経緯にともなう Mn の酸化数の変化によって主として変調される。近隣の Mn の e 由来軌道間における電子の移動は LiO4 四面体の動的変形を促す。Li と電子の移動はしばしば対をなし、それは局所的な格子の変形を介在している。Li の拡散機構には2種類あり、ひとつは Li の濃度勾配を利用した古典的なポッピング拡散、もうひとつは Mn の 3d 電子の濃度勾配に基づくポーラロンの移動に随伴する Li の拡散である。


Isolation of solid solution phases in size-controlled LixFePO4 at room temperature

Genki Kobayashi, Shin-ichi Nishimura, Min-Sik Park, Ryoji Kanno, Masatomo Yashima, Takashi Ida, Atsuo Yamada

Adv. Funct. Mater., (in press) (2009)

安全性が高く安価で高性能な Li イオン電池の電極材料として期待されている LixFePO4 (0 < x < 1) について, 室温で中間組成と x=0 および x=1 に近い組成の固溶体を分離した。 サイズに依存した相図の変化と,酸化還元ポテンシャルと密接な関係のある固溶体成分ドメインの格子定数を示した。 これらの実験結果は,二相平衡ポテンシャルの上下で観測された過剰容量の大部分がバルク固溶体に由来し,サイズに依存する相分離モデルを支持する。
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2008年度の報文

Mn4O4 heterocubane cluster in LiMn2O4

K. Tateishi, H. Iguchi, M. Kamosita, N. Ishizawa

Photon Factory Activity Report #2007 Part B (2008) in press


Rhombohedral modification of Sr and Ti co-doped LaAlO3

N. Ishizawa, Y. Inagaki, I. Kagomiya, K. Kakimoto, H. Ohsato

Photon Factory Activity Report #2007 Part B (2008) in press


Statistical Properties of Observed X-ray Intensities Affected by Counting Loss

Takashi Ida, Akihisa Oya, Hisashi Hibino

Photon Factory Activity Report #2007 Part B (2008) in press


2008年度の解説記事・その他

粉末回折法の使い方(1) − 装置の選び方と使い方 −

井田隆

J. Flux Growth, 3(1), 2-6 (June 2008)

粉末X線回折装置およびアタッチメントの選定法と使用法について解説した。 伝統的な粉末回折計に用いられているブラッグ・ブレンターノ型のデザインについて, どのような理由で高精度測定が実現されているかについて詳述した。 高出力のX線源はどのような場合に有効であるか, またX線源の日常的な使用において留意すべき点, ゴニオメータの付属品としてモノクロメータを使用する場合のメリットとデメリット, X線検出器の種類と特徴などについて述べた。
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回折ピーク形状分析による粒度分布評価

井田隆

セラミックス, 43(1), 917-921 (November 2008)

粉末X線回折ピーク形状の分析から,平均的な結晶粒サイズだけでなく, 結晶粒サイズの統計的な分布を評価することが試みられるようになってきた。 従来の回折線幅分析による結晶粒径評価法について概説し, 著者が独自に開発した手法の紹介を交えて, 粉末回折ピーク形状分析による結晶粒径分布評価という新しい形での粉末X線回折法利用の現状について紹介した。
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間違いを乗り越えて(巻頭言)

石澤伸夫

J. Flux Growth, 3(2), 49 (December 2008)


粉末回折法の使い方(2) − 測定試料の準備 −

井田隆

J. Flux Growth, 3(2), 50-55 (December 2008)

粉末X線回折測定をするための試料の準備の方法について解説した。 一般的な粉末X線回折装置を用いて回折強度測定をするためには,結晶粒が 1 - 10 μm の大きさであることが望ましいとされる。 この理由が,粒子統計という考え方から説明できることを示した。 回転試料台や無反射試料板の使用について述べた。
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Polaronic behavior of Mn4O4 heterocubane clusters in LiMn2O4 spinel(第21回国際結晶学連合会議におけるスピネル関連マイクロシンポジウムの報告)

石澤伸夫

日本結晶学会誌, 51(2), (February 2009) 印刷中


2008年度の学会発表

"Lithium Diffusion in Lithium Manganite Crystal" (plenary lecture)

Nobuo Ishizawa

International Conference for Young Scientist 2008, Penang Universiti Sains Malaysia,
(June 2008) Penang, Malaysia
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「粉末X線回折ピーク形状による微小歪みの評価」

大矢哲久・井田隆

日本セラミックス協会 東海支部 第36回東海若手セラミスト懇話会 2008年 夏期セミナー
(2008年7月10日) 岐阜
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「希土類ルテニウム複合化合物Ln3RuO7の高温構造変化」

近藤早・鴨下三奈美・諏訪毅・石澤伸夫

日本セラミックス協会 東海支部 第36回東海若手セラミスト懇話会 2008年 夏期セミナー
(2008年7月10日) 岐阜
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「Sr(Ca)-Nd-Ru-O系複合酸化物の単結晶の合成と構造」

井口浩詠・岡田敬太・石澤伸夫

日本セラミックス協会 東海支部 第36回東海若手セラミスト懇話会 2008年 夏期セミナー
(2008年7月10日) 岐阜
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“Phase transition in Gd3RuO7 and Tb3RuO7 at elevated temperatures”

Nobuo Ishizawa, Saki Kondo, Hisashi Hibino, Hiromi Nakano

XXI Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography (IUCr2008)
(August 26, 2008) Osaka
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“Structure of Sr and Ti codoped LaAlO3 perovskite”

Yumi Ingaki, Nobuo Ishizawa, Hitoshi Ohsato, Kagomiya Isao, Kakimoto Ken-ichi, Shimada Takeshi

XXI Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography (IUCr2008)
(August 26, 2008) Osaka
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“Statistical properties of measured x-ray intensities affected by counting loss of detection system”

Takashi Ida, Akihisa Oya and Hisashi Hibino

XXI Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography (IUCr2008)
(August 28, 2008) Osaka
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“Polaronic behavior of Mn4O4 heterocubane clusters in LiMn2O4 spinel”

Nobuo Ishizawa, Kenji Tateishi

XXI Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography (IUCr2008)
(August 30, 2008) Osaka
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In-situ TEM observation of phase transformations in layered perovskite BaLn2Mn2O7 (Ln = rare earth)

Electroceramics XI
(August 2008) Manchester, England
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「ペロブスカイト型酸化物 Bi1/2Ag1/2TiO3 における極性と相転移」

稲熊宜之・鈴木俊彦・相田朋哉・但住俊明・勝又哲裕・王瑞平・日比野寿・井田隆・真下祐一・上江洲由晃

日本セラミックス協会 第21回秋季シンポジウム
(2008年9月18日)北九州
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「粉末X線回折測定における粒子統計の評価」

井田隆・後藤大士・大矢哲久・日比野寿

日本セラミックス協会 第21回秋季シンポジウム
(2008年9月18日)北九州
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「Sr(Ca)-Nd-Ru-O系複合酸化物単結晶の合成と構造」

井口浩詠・岡田敬太・井田隆・石澤伸夫

日本セラミックス協会 第21回秋季シンポジウム
(2008年9月18日)北九州
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「Gd3RuO7 単結晶の合成と構造変化」

鴨下三奈美・石澤伸夫・井田隆

日本セラミックス協会 第21回秋季シンポジウム
(2008年9月18日)北九州
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「Sr3Nd7Ru4O24 単結晶の合成と構造」

井口浩詠・井田隆・石澤伸夫

日本セラミックス協会東海支部学術研究発表会
(2008年12月6日) 名古屋
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"Heterocubane Mn4O4 Cluster in LiMn2O4 Spinel and Its Relation to the Oxygen-Evolving Complex of Photosystem II"

Nobuo Ishizawa

The 3rd International Workshop on Advanced Ceramics (IWAC03)
(November 2008) Limoges, France
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「Gd3RuO7 の高温構造変化」

鴨下三奈美・近藤早・井田隆・石澤伸夫

日本セラミックス協会東海支部学術研究発表会
(2008年12月6日) 名古屋
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「粉末回折ピーク形状分析による微小歪みの評価」

大矢哲久・日比野寿・井田隆

日本セラミックス協会東海支部学術研究発表会
(2008年12月6日) 名古屋
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「Gd3RuO7結晶のフラックス育成と構造」

鴨下三奈美・井田隆・石澤伸夫

第3回 日本フラックス成長研究発表会
(2008年12月19日) 東京
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「(Sr,Nd)11Ru4O24 結晶のフラックス育成と構造」

井口浩詠・井田隆・石澤伸夫

第3回 日本フラックス成長研究発表会
(2008年12月19日) 東京
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「粉末X線回折法における粒子統計の評価とその応用」(招待講演)

井田隆・後藤大士・大矢哲久・日比野寿

第4回粉末回折法討論会:粉末法の新しい技術と応用
(2008年12月26日) つくば
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「ガドリニウムルテニウム複合酸化物Gd3RuO7 の高温構造変化」

鴨下三奈美・近藤早・井田隆・石澤伸夫・中野裕美

第47回セラミックス基礎科学討論会
(2009年1月9日) 大阪
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「(Nd,AE)11Ru4O24(AE=Sr,Ca)の単結晶合成と構造」

井口浩詠・日比野寿・井田隆・石澤伸夫

第47回セラミックス基礎科学討論会
(2009年1月9日) 大阪
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「国内 研究インターンシップを活用したセラミックス工学教育」

春日敏宏・石澤伸夫・野上正行

日本セラミックス協会2009年年会 教育セッション
(2009年3月)野田
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2009年02月1日