最適化計算

数値計算(コンピュータを使った計算)の分野では,関数の最大あるいは最小を求めることを最適化 optimization と呼びます。これは「最大値」あるいは「最小値」を求める事とは意味がまったく違い,「関数が最大値あるいは最小値をとるときの変数の値を求める」ということを意味します。 関数が y = f(x) と表されるような一変数(一次元)の関数の場合には,多少計算のしかたに無駄があっても気にならない場合が多いのですが,関数が y = f(x1, x2, …, xM) のように表される多変数(多次元)の関数の場合には計算時間が長くなりがちなので,少し工夫をするだけでも効果のある場合が多いようです。

関数 f(x) の最大を求めることは関数 −f(x) の最小を求める事と同じ事なので,この後は関数の最小を求める問題に限って考えます。

大域的な最小 global minimum を正しく求める事は一般的に困難です。局所的な最小(極小) local minimum を求める事ができる場合には,(i) ランダムに選んだ出発点から極小を求める操作を繰り返したり,(ii) 極小が求まった後にある程度離れた出発点から極小を求める操作をやり直す方法などが用いられます。

最適化の算法(アルゴリズム)のうち,疑似乱数を用いない非モンテカルロ系の方法として滑降シンプレックス法,最急降下法,方向集合法,共役勾配法,可変計量法などがあり,疑似乱数を用いる方法にはランダム・サンプリング,棄却サンプリング,メトロポリス法,擬似焼鈍法,遺伝的アルゴリズムなどがあります。


講義予定(変更する場合があります)

第1回 コンピュータの基礎(1)論理演算

記号論理,ブール代数,ド・モルガンの法則,電子回路による論理演算(参考資料,PDF

第2回 コンピュータの基礎(2)記憶素子

スタティック・メモリ,ダイナミック・メモリ(参考資料,PDF

第3回 コンピュータの基礎(3)算術演算

半加算回路,全加算回路,補数表現(参考資料,PDF

第4回 コンピュータの基礎(4)数値計算

数の表現,IEEE規格,初等関数と特殊関数(参考資料,PDF

第5回 構造のシミュレーション(1)原子間力

ペアポテンシャル,レナード・ジョーンズ・ポテンシャル,BMH ポテンシャル(参考資料,PDF

第6回 構造のシミュレーション(2)分子間力

分子間力,ファンデルワールス力,多重極子モーメント(参考資料,PDF

第7回 構造のシミュレーション(3)計算法

7−1 周期的境界条件(参考資料,PDF

7−2 エバルト法(参考資料,PDF

付録:格子和計算(参考資料,PDF

付録:ベルトウ法(参考資料,PDF

付録:セル多重極子展開法(参考資料,PDF

第8回 最適化計算とモンテカルロ法(1)確率論的な解釈

ベイズ推定,最尤推定法,最小二乗法

付録:ベルトランの箱のパラドックスとベイズ推定
(参考資料,PDF, 235 kB

付録:三囚人問題とベイズ推定
(参考資料,PDF, 358 kB

付録:モンティ・ホール問題とベイズ推定
(参考資料,PDF, 909 kB

第9回 最適化計算とモンテカルロ法(2)最適化計算

黄金分割法,滑降シンプレックス法

第10回 最適化計算とモンテカルロ法(3)モンテカルロ法1

モンテカルロ法の考え方,ランダム・ウォーク

第11回 最適化計算とモンテカルロ法(4)モンテカルロ法2

メトロポリスのアルゴリズム,擬似焼鈍法,遺伝的アルゴリズム

第12回 分子動力学法(1)統計的な集団

統計集団(アンサンブル),ラグランジュ力学,ハミルトン力学

第13回 分子動力学法(2)圧力の制御

アンデルセンの方法,パリネロ・ラーマンの方法

第14回 分子動力学法(3)温度の制御

速度スケーリング法,能勢の方法

第15回 分子動力学法(4)数値積分

ベルレ法,ギア法


2012年4月10日